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奈良の墨

奈良は、日本の墨づくりが長く受け継がれてきた土地です。その土地の文化を建築の中へ取り入れるため、壁や天井の左官材には奈良の墨を混ぜています。

 

目指したのは、均一で平滑な黒い壁ではありません。

 

左官職人が一面ずつ鏝を動かし、その手の跡をあえて残す。光が正面から当たると穏やかに見え、斜めから差し込むと、わずかな凹凸や濃淡が浮かび上がる。時間帯や見る位置によって、同じ壁が異なる表情を見せます。

 

墨を単なる「黒」という色として選ぶのではなく、この土地に根付いてきた素材と、人の手仕事が重なったものとして使う。壁そのものに、この場所の風土を宿しています。